印象記 第84回日本眼科学会総会印象記
網膜(第1会場 第1席〜第10席),他
大庭 紀雄
1
1鹿児島大学
pp.1299-1323
発行日 1980年9月15日
Published Date 1980/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410208188
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学会第1日,第1会場では網膜に関する研究が10題報告された。研究方法として,従来からの電子顕微鏡にくわえて,生化学的方法による研究がかなりみられるようになり,今後の方向が示唆された。以下に,記述の便宜上,順不同で報告の概要を紹介する。
視細胞外節が一定不変ではなくて,時々刻々更新されていることは10年ほど以前に記述された現象であるが,更新は概日性の周期をもっておこっているという最近の発見は,さきの国際眼科学会でYoungの特別講演で紹介されたとおりである。この新しい知見をさらによく理解するための研究が玉井信氏ら(東北大)により行なわれた。彼らによれば(ラットを使用),外節の更新に関連する過程としての内節からの外節の再生,外節先端の放出,および色素上皮細胞による放出された外節の貧食,のそれぞれで概日性リズムが成立する。そして,生後間もないラットを川いて,リズムの発達状況を色素上皮細胞における外節貧食について調べると,生後2週間ですでにリズムの形成がみられ,1ヵ月になれば完全なものとなる。このような所見は,光環境の明暗の周期下でみられるのであるが,生後5日目より持続光で飼育した場合にはどうなるであろうか。照射光の強さはそれほど強いものではなかったが,視細胞の分化や外節の発達は促進され,ついで生後3〜4週頃からは変性所見がみられるようになった。
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