銀海余滴
人道的実験技術
桐沢 長徳
pp.1187
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207004
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前号で私は「犬の豪華アパート」という短文を書いてその中で動物実験をする人の態度について考えてみた。所が,図らずも丸善の雑誌「学鐙」の最近号にのつている新刊書紹介の中に,Russell,Burchという著者(英人)が"the Principleof Human Experimental Tech-nique"という本を出していることが安東洪次氏によつて述べられている。その内容は動物実験に於ける根本原理を説いたもので「実験動物を平安から苦悩に至る精神状態の階段の,できるだけ上位の状態に動物を置くことが『人道的』というわけで,これによつてのみ正確な科学的成績が期待出来る」と述べて居り,丁度私が前項で抱いた感想を見事に裏付けている。
この本の内容については私もまだ読んでいないので分らないが,動物の種々の環境がその生理的反応に及ぼす影響を詳しく説いてある由である。然し,私が今問題にしたいのは,その内容の詳細よりも,このような根源的な反省を日本の実験者が真剣に考えたことが果してあるだろうか,という点である。
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