故中村康教授追悼号 談話室
欧米旅日記(その1)
萩原 朗
1
1東大
pp.710-716
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206033
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1昨年11月3日日航で羽田空港を飛立ち,米国を始めとして英,仏,独,瑞(西)和,丁,瑞(典),諾,伊10カ国を廻つて,昨年10月17日羽田に帰着致しました。中泉主幹から何か帰朝の挨拶を書くようにとのことでありましたので,格別纒つたお話しもありませんが,只通つて来た道順を竝べる程度で,想い出すまゝに禿筆を走らせることに致します。
私の1カ年間の外遊が決つたのは,1昨年の初めのことでしたが,種々の都合で上記のように11月の上旬まで延びました。その時,私は,1カ年間世界を廻るとしたら,果して東へ向つて出発した方がよいか,或は西へ向つた方がよいかを考えて見ました。11月と云えば所謂向寒の季節です。聞けば米国は,極寒の季節でも,室内は常に日本の5,6月頃の気温に保たれて居るとのこと。それに引換えて欧洲は,暖房の点では米国にはとても及ばない。そうして見れば,寒い間を米国で過し,暖かくなつてから欧洲を廻つたら快適であろうと,そんな横着な考え方が,先ず私の心をぐんぐん米国の方へ引張りました。次に米国は何と云つても当代随一の勢いのよい国です。この国の施設を見て置けば,欧洲へ渡つてから,各国の施設を落着いて批判することが出来るだろう。又米国は暮すにも旅行するにも金の要る国である。
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