海外だより
これから欧米に旅する人々のために(欧州編)
鈴木 礼三郎
1
1東北大学医学部桂外科
pp.373-380
発行日 1962年5月20日
Published Date 1962/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202889
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アイレ国,ダブリン市で開催の国際外科学会に出席することが決つてから,先ず体力脚力の訓練と,英会話の勉強を始めた.私は戦時中海軍々医として駆遂艦に乗組み,如何に体力が必要であるかを痛感していたので,当然頭に浮んだ第一条件であつた.平常は頭の良い人でも二,三日も戦斗が続くと,体力の無い神経質な人は,ボーットなつてコンマ以下になることを知つていたからである.
次に他人の紹介状によつてある人を尋ねたり,あるいは大名旅行をせずに,一個の日本の外科医が世界の外科医を相手にどれだけの価値をもつものかをも試してみたかつた.世界一周は自分の子供の時からの夢であつた.愈々実現する段階になつたが限られた経済と時間の関係で欧州は医学と離れて日本人として種々の国の民情を知り,現在の国際情勢を見て見聞をひろめ,米国において自分の専門分野の外科,ことに膵臓,肝臓,胆道系疾患についてその道の専門家と意見の交換を考えた.
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