臨床実験
高血圧症に於ける眼球結膜血管の顕微鏡撮影観察
菊田 昇
1
Noboru Kikuta
1
1東北大学医学部産婦人科教室
1Depertment of Gynecology & Obsthetolics School of Medicine, Tohoku University
pp.63-69
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205579
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第1章 緒言
高血圧症の場合のみならず生体に於ける小血管の状態,特に脳の血管状態を観察するためには,従来網膜血管が主として利用されている。然し普通の検眼鏡では網膜の終末動静脈や毛細血管の形態を充分に観察することが困難であるので眼球結膜床の血管を拡大して直接観察することも応用され,それに関する報告が2〜3ある。
Muller1)は良性高血圧ではspastische atonis-che Symptomen Complexとして,血管末端の動脈脚は狭く,静脈脚は迂曲拡大し,屡々静脈瘤的に拡張し,血流は断続的で速い。悪性高血圧症では動静脈共にrein spastischである。この状態は結膜血管だけに限らず,口唇,粘膜,皮膚,爪床,その他の部分にも同様に認められると云う。最近Lee2)等も同様に結膜の動脈系の変化と小動脈の迂曲蛇行等を認め,而もこの動脈はアドレナリンに特に過敏に反応すると云う。又,Landesmann等3)は本態性高血圧症に於ては,細動脈痙攣の程度は血圧上昇と密接な関係があり,重症では総てに細動脈痙攣が見られ,軽度の高血圧症(拡張期で110以下)でも80%に認められる。そして毛細血管の捩れ高度と,細静脈瘤の存在は本態性高血圧症に特有であると述べた。
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