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I.緒言
毛様体炎を伴なう虹彩異色はFuchsの名を冠して呼ばれる。最近はSyndromeとしてFuchs症候群とも云われるが,ここでは以下これを用いる。従来欧米,殊に欧州の諸国ではその報告も多く,発表された症例数は数百に及んでいる。これに反し我国では稀とされ,神作1)楠原2)の各1例と,それと疑われる庄司の1例3)計3例の報告を見るに過ぎない。また我国でなされた葡萄膜炎の分類に関する論文の中に本症候群の項目は見出されない。果して本症群は邦人の間には極めて稀なものであろうか。確かに疾患によっては人種,地域の差などによつて発生頻度を著しく異にするものもある。しかしまた一面その疾患がその地域で注目されているか否かということ,或るいはまた診断の基準が同一でないなどのことが発生頻度の上に見かけ上の相違をもたらすことも当然起りうることであろう。
本症候群はKurzes Handbuch (1930)4)中の分類では葡萄膜炎の0.8%であり,Kimuraら5)は1949〜1950の間に750例の葡萄膜炎のうち2%を占めて,重要な一つのClinical entityであるとしている。これらは葡萄膜炎全体に対しての比率であり,若しこれを前部葡萄膜炎(虹彩毛様体炎)の中でということになれば比率は更に大きいものとなるであろう。葡萄膜炎の原因をつきとめるのには多くの困難を伴ない,病因による分類を行なうのも容易でない。
Only three cases of heterochromic cyclitis have appeared in Japanese literatures. In this paper the authors presented two cases of this condition. A 30-year-old female and a 32-year-old female who had no history of ocular dise-ase complained of blurred vision. Right eyes of these patients had slightly hypochromic iris and posterior subcapsular cataract. Nume-rous whitish grey precipitates were seen on the posterior surface of the cornea. After cat-aract extraction a good vision was restored. Reviewing European and American literatures the authos made a discussion especially on the diagnostic criteria.
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