特集 眼科検査法(1)
巻頭言
「眼科検査法」特集号によせて
桐沢 長徳
1
1東北大
pp.1085
発行日 1963年10月15日
Published Date 1963/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202800
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眼の診療がまず臨床検査からはじまることはいうまでもない。しかも,医学の近代化が進むに従つて検査法の占める割合が大きくなつてくることは眼科のみならず,どの科でも全く同様である。たとえば,内科においても,最近は,打診と聴診器だけで診断のつく病気はきわめて稀になり,その大部分はレントゲン検査や中央検査室の化学的,組織学的検査の結果からようやく診断もつき,治療の方針も決定される,というケースが殆んどといつてもよいぐらいになり,開業医の検査センターの設置も問題となりつつある現状である。
眼科においてもこの傾向は全く同様であり,以前のように一見して診断のつく重症トラコーマや結膜炎はだんだん少なくなり,精密な検査によつてはじめて診断を確定し得るような患者が多くなつたことは病院でも開業医でも同様であり,ここに検査法の重要さがいよいよクローズアップされることとなるのである。たとえば,上にあげたトラコーマのような一見簡単な病気にしても,現在のものは殆んどが軽症であり,従つて,その確診には軽微なパンヌスの進展や真性濾胞か否かの確定,肉眼では見えぬ瘢痕の証明などいずれも細隙燈なしには診断し得ないこととなり,結膜炎にしてもきわめて微細な角膜上皮や内皮の変化を細隙燈顕微鏡によつて発見することによって流行性角結膜炎の早期診断を下し得ることは周知の事実である。
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