談話室
第17回国際眼科学会の感想
佐藤 邇
pp.852-853
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202239
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私は近視の原因に就いて発表する為国際眼科学会(1954年9月10日から17日)に出席し,帰途,北米,カナダ,アルゼンチン,フランス,英国,ドイツ,スイス,伊太利等へ参りました。飛び廻つた距離では,人後に落ちぬものであります。併し近視のSymposiumをするため,9月3日に出発し,10月17日(45日間)に帰らねばならぬと云う極めて短期間で有りましたから浅薄な知識しか得られませんでした。夫故,感想のみを述べさせて頂き度いと思います。
外国へ行きますと,常に日本と比較と云う事が念頭に浮びます。此の中で,私が痛感したのは,第一に如何に日本が上記の国々に比べて貧乏で有るかと云う事で有ります。之は兼々聞いて居た事でしたが,我々日本人は貧乏の程度の如何に大であるかと云う事を認識して居ないで遊んだり,仲間げんかをして居るのだと思います。米国は迚も問題になりませんが,一番有名で無い「レバノン」の「ベイルート」(私は茲に一泊する迄,そんな国も町も知らなかつた)をとつて見ても奇麗な15階位の建物が並んで,新式の自動車が鋪裝道路に沢山走つて居ります。又「フランス」は経済状態が悪いと聞いて居ましたが,彼等の衣食住は自動車に乗って,しつかりした家に電気冷蔵庫を持つて,御馳走を食べ,葡萄酒を昼間から飲み,良い着物を着ようとするから苦しいので,我々が生存の最低線を守るのがやつとと云うのとはわけがまるで違います。
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