特集 第7回臨床眼科学會
普通講演
(1)鞏膜炎及び上鞏膜炎の前房隅角鏡所見
河野 辰雄
1
1日本大學眼科
pp.187-192
発行日 1954年2月15日
Published Date 1954/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201753
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鞏膜炎と上鞏膜炎とを明らかに臨床上區別することは困難であるのみならず,同一の原因によつて同時に罹患することが多いが,一般には球結膜下の比較的淺い炎症で,充血や降起の強いものを上鞏膜炎といい,一方比較的深層に病竈があつて,硬化性角膜炎,虹彩毛様體炎,脈絡膜炎を合併するものを鞏膜炎といい區別されている。他方前房隅角部は角膜,鞏角膜移行部,毛様體部,虹彩竝びに水晶體によつて圍まれ,この隅角部はその中に存する櫛状靱帶によつて更に多くの小腔に分たれ此の小腔をフオンタナ氏腔と呼び,此の直前方にシユレム氏管があつて,此の兩者を界するものは櫛状靱帶とその中に介在する鞏膜胛とである。櫛状靱帶を構成する繊維の中,角膜後層から發して鞏膜胛に附着する部分を鞏角膜繊維桂(Tra-beculum sclerocorneae)と稱し,同じく角膜後層から發して毛様體の前面を被い,虹彩根部に達する部分を鞏膜毛様體繊維桂(Trabeculumsclerociliaris)と稱し,これには虹彩突起と葡萄膜織維柱とがある。此等の櫛状靱帶織維柱及びシユレム氏管は内皮細胞で被われているが,虹彩の前面では完全に内皮細胞でを被つていない。以上の如く,斯る構造を有する隅角部は鞏膜と密接なる關係を持つて居り,從つて鞏膜の炎症時に於ては,炎症の影響が容易に隅角部に波及することは首肯し得られる所である。私は其の關係を迫求する爲に本研究を行つた。
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