綜説
前房隅角視診法(Gonioscopy)に就て
荻野 紀重
1
1前橋大學醫學部
pp.213-217
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200814
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Ⅰ.緒言
總て疾患の診斷,經過の觀察等に於て直接病竈を觀察し得る事は極めて有利である事は論を俟たない。眼科に於ても檢眼鏡により眼底檢査が可能となつて以來,從來黑内障として一括せられた眼底疾に多種多樣のものがある事が明かにされたのは周知の事實である。其他の領域に於ても膀胱鏡胃鏡,關節鏡等病竈を直接視する後多くの努力が拂われている。
前房隅角は眼房水排出路として重要な部位であり,且實際は比較的簡單に視診する事が出來るに拘わらず,我國に於て近年迄あまり發達しなかつたのは,此部の構造及び機能が網膜等に比し簡單であり,緑内障等の特殊な場合にのみ變化が期待されて,其他一般にはあまり重要視されなかつた爲と思われる。Trantas,Salzmann,我國に於ては水尾,小柳により始められた前房隅角視診法,(Gonioscopy)は其後あまり顧られなかつた樣であるが,1925年TroncosoがGonioscopeを考按して以來特に米國に於て此方面の研究が極めて盛になり,緑内障の研究其他に多大の貢献をなすに至つたのである。私も微力乍ら最近此方面の研究に志し一昨年の關東眼科集談會,昨年の日眼總會に發表したのであるが,此處には隅角視診法の一般に至り,主として私の渉獵した文献を綜合し,他に若干自分の經驗を挾んで逃べる事にする。細かい數字は紙面の都合で殆んど省略したが,其については別に末尾文献其他を參照して頂き度い。
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