私の研究
光感覺機轉について
飯沼 巖
1
1阪大醫學部眼科教室
pp.496-498
発行日 1949年11月15日
Published Date 1949/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200482
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眼の光感覺機轉の概念はHechtによつて,網膜感光物質の光分解及び分解産物の再合成化學反應として理解されて來た。しかし前行明順應の強度如何がそれに續く暗順應經過に異つた影響を與える事實,或は川上氏等の認めた明順應曲線の振動性等は以上の考えのみを以つてしては,到底説明出來ない故に,親循環に於て化學構造相の相違した物質の生ずる程度により起る合成速度の差,(Wald),光分解と分解産物の擴散(川上),光による暗順應速度を決定する因子の出現消滅(江原)等の假説をたてることにより夫々説明している。
しかし私は之等の問題を更に檢討する爲,暗順應經過中に於ける光感覺所要エネルギーの面から實驗及び解析を試みた。即ちNagel暗順懸計及びHippusのChro-noskopを用い,1000Luxの白色照度面に1',10'の二種類の明順應後の暗順懸經過中一定時限毎に刺戟閾値の2倍に相當する刺戟に對する反應時間を測定したところ,その結果は,暗順應開始後反應時間が次第に長くなり,Kohlrauschのknickの現われる頃一寸短くなるが,後次第に長くなり遂に一定値をとる樣になる。此の樣な反應時間の變化は,暗順應開始直後に於て1'明順應より10'明順應後の場合の方が,暗順應開始直後短縮しているのみでなく,其の後の經過に於ても延長が遲れて現われる。しかし共に同じ一定値をとつて延長は止る。
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