原著
胎盤剥離機轉に對する疑義
九島 勝司
1
1福島醫專
pp.266-267
発行日 1950年7月10日
Published Date 1950/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200362
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産科領域には先人の講述がそのまゝ無批判的に享け繼がれ,嚴密な檢討が加えられてない分野が今なお存在するようである.胎盤剥離機轉も亦その一つではないかと思われる.筆者が知る限りでは,總ての産科學教科書及參考書は本機轉を機械的剥離説で説明している.即ち「分娩中は,陣痛發作時に子宮が收縮し胎盤の附着面が縮小しても同時に子宮内壓が亢進して胎盤を附着面に壓定するから胎盤剥離は起らぬ.然るに胎兒娩出後は,子宮内壓及び子宮面積が急に減少し,更に第3期陣痛により胎盤附着部位は益々縮小するに反し,胎盤自體には縮小性がないため,終には兩者の間にズレが生じて剥離し,爾後は剥離部位から流出した血液が水力學的に剥離を擴大して行く」と言うのがそれである.しかしこの説には納得しかねる部分があるから少しく檢討して見ることにしよう.
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