臨床實驗
房水の産生及び流出機轉に就て
呉 基福
pp.12-16
発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201390
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吾々の一般概念に從えば房水の新陳代謝は極めて緩慢なる經過をたどるものと思われて居たがこゝ數年來Spaltlampを應用せる研究手技の異常なる進歩によつて多大なる修正が加えられた。斯くして房水循環の研究は現在歐米眼科學界の主題なる觀を呈しAqueous veinの確認,Fluoresceintestの應用,房水成分の詳細なる研究,Gonio-skopyによる前房隅角の觀察等目ざましい研究業蹟が次女と發表された。本問題に就ては勿論毛細血管の機能に關する研究が解決の鍵をにぎつていて,血管壁を通つて房水が産生され,又特殊な管系を經て房水が排出される此の全經過は毛細血管の透過性を追求する事によつて究明され得る。
房水産生に就ての學説は時代の變遷によつて多大なる變化を經て來た。分泌説の樣な一種の超機械的で説明の餘地の少ない特殊作用によるという考,次いで此のVitalismを否定した純機械的作用によるという思想,或いは物理學的作用(mec-hanism)を基本として分泌作用(secretory acti-vity)を加えた中間説が相次いで發表された。此等諸學説にはいずれも議論の餘地が殘されていて最後的結論を下し得ない。しかし過去の錯綜せる研究に吟味を加え,更により新しき方向に向つて努力する事は極めて重要である。此の見解に立ち且つ私の長年の研究である毛細血管の問題を論據として茲に房水の循環に關する諸問題に研討を加えて見たいと思う。
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