海外旅行に備える感染症情報

　海外旅行の魅力を一言で表すとすれば，それは「非日常性の体験」ではないだろうか。退屈な日常を離れて，遠い異国の地で新しい体験をする。それこそが海外旅行の醍醐味である。ウィリアム・ワイラー監督の名作「ローマの休日」でも，オードリ・ヘップバーン扮する王女が，旅先で夢のような世界を体験している。そんな夢の世界に憧れて，旅に出る方も多いことだろう。ところが，ちょっとした歯車の乱れで夢の世界が悲劇の舞台に変わることもある。

　このような旅行中の歯車を乱す原因の１つに，健康問題があげられる。その発生頻度は意外に高く，WHOの推計によれば，発展途上国（途上国）に１か月間滞在した場合，なんらかの健康問題は５０～６０％，実際の病気は２０～３０％の旅行者に発生している^１）。こうした健康問題として，とくに途上国への旅行者にとっては，衛生環境の悪化による感染症が大きな要因となっているのである。海外旅行者に夢の世界を堪能してもらうためには，医療関係者として，感染症などへの健康対策を施していただきたい。