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はじめに
これまで視神経炎といえば,脱随性視神経炎がその代表とされてきた。その理由は,欧米やわが国における特発性視神経炎治療トライアルにおいて,臨床的特徴や,多発性硬化症への移行の割合,予測因子が判明したことが大きい1,2)。
しかし,日本では「ちょっと違うんじゃないか」と思わせる特発性視神経炎が少なからず存在していた。多発性硬化症においても,わが国では欧米に多い再発寛解型に加え,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:以下,NMO)と呼ばれるものが多いことがわかっていた。NMOは,文字どおり視神経炎と脊髄炎を生じるもので,視力予後や神経予後が不良なものもあり,その最も劇症型はDevic病と呼ばれていた。特発性視神経炎と思われていたもののなかに,脊髄症状はなくステロイド治療に反応しない例や,ほぼ両眼同時に失明に至る重症例,あたかも「Devic病の視神経炎のみのもの」と思わざるをえないようなもの,あるいはあとから重症な神経障害を生じてくるものなど,さまざまな「ちょっと違う」特発性視神経炎があり,診療に混乱をきたしていた。
そういったなかで,近年,NMOに特異的な自己抗体であるアクアポリン4(aquaporin 4:AQP4)抗体が発見された3)。その後の臨床例がわが国でも蓄積されることによって,抗AQP4抗体陽性症例では視神経脊髄炎のみでなく,視神経炎のみ発症するものがあった。それらは前述の「ちょっと違う」特発性視神経炎の特徴によく似たものがあり,われわれ眼科医は「これだったんだ」と膝を打ったのである。
ところが,抗AQP4抗体陽性視神経炎のなかには予後のよいものもあり,臨床的特徴,適切な治療法など,まだはっきりしていない点も多い。本特集では,まずよくわかってきたNMOの臨床的な特徴を述べ,その後抗AQP4抗体陽性視神経炎の自験例から臨床的な特徴を探りたい。
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