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はじめに
近年,各種の緑内障治療薬が開発され,臨床的にも使用されるようになってきたが,最大限に点眼・内服治療を行っても視野障害が進行する場合は手術を考慮せざるをえない。手術方法にもいくつかの術式があるが,中でも最も選択される術式が線維柱帯切除術であることは異論のないところであろう。この手術の成否を左右するのは術後濾過胞の適正な維持である。濾過胞を機能的かつ形態的に,適切に維持するための鍵を握るのが結膜組織の線維化,すなわち瘢痕形成である。したがって,いかに術後の瘢痕形成を抑制するかが機能的な濾過胞を維持するためのポイントになる。
近年,結膜およびテノン囊の線維芽細胞(および筋線維芽細胞)増殖を抑制するためにマイトマイシンC(mitomycin-C:以下,MMC)やフルオロウラシル(5-FU)を術中に使用することが一般に行われている。しかし,MMCは正常細胞にも代謝拮抗作用を及ぼすため,筋線維芽細胞の増殖を抑制するのみならず,正常結膜上皮細胞やテノン囊の線維芽細胞,血管内皮細胞などを傷害して濾過胞結膜の非薄化や房水の漏出をきたし,感染症などの重篤な合併症を発生させる危険性をもった薬物である。このため,現在のMMC併用線維柱帯切除術もさらに改良の余地があることは明白である。可能ならばMMCを併用せずとも効果的な濾過胞を維持したいというのは多くの眼科医にとって共通の思いであろう。
近年,緑内障手術後の濾過胞や結膜下での筋線維芽細胞の増殖に関して,生理活性物質の視点からみた病態の理解が進んでいる。それらの生理活性物質を制御することで濾過胞の適正な維持を成し遂げようとする方向性をもった研究も多数行われている。今回はそれらの一部を紹介する。
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