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特集 基礎研究から難治性眼疾患のブレークスルーをねらえ
加齢黄斑変性
Age-related macular degeneration
柳 靖雄
1
Yasuo Yanagi
1
1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学
pp.1960-1967
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103479
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はじめに
加齢黄斑変性の最近の研究はめざましい。臨床的には光線力学療法,そして,現在治療の主体となっている抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)療法などは長年の基礎研究の成果が臨床に応用された例である。加齢黄斑変性は網脈絡膜の加齢性変化を基盤とする疾患であるので,実験動物を用いて網膜色素上皮,Bruch膜,脈絡膜の加齢性の変化に注目し加齢性の変化を制御する因子の解明が試みられている。また,脈絡膜新生血管の研究は,マウスやラット,サルなどを用いたレーザー誘発性の脈絡膜新生血管モデルで,脈絡膜新生血管の活動性を制御する因子の検討が広くなされている。一方,ヒトを対象にした研究では疾患感受性遺伝子が明らかとされ,臨床的に得られた知見を今度は動物モデルに還元して検討が行われようとしている。
加齢黄斑変性の病態解明,脈絡膜新生血管治療後の瘢痕病巣の制御,効率的なドラッグデリバリーシステムの開発など,私たち眼科医が積極的にかかわり研究成果を臨床に応用すべき事柄は多い。これまで多くの研究者が壁にぶつかり,その壁を乗り越え新たな治療が開発されてきた。本稿では加齢黄斑変性の基礎研究のこれまでの進歩について,ブレークスルーを生み出してきた先駆者たちの功績を整理して述べたい。そして私たち臨床眼科医が,基礎研究を通してどのようなブレークスルーをめざすのかを述べたい。
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