書評
加齢黄斑変性
米谷 新
1
1埼玉医大・眼科学
pp.990
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102765
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京大グループから上梓されたこの本を手にすると,大型で256ページもあり,タイトルからイメージされる以上のボリュームに圧倒されるかもしれない。しかし,ご安心あれ。この本は,高い専門性と学術性を備えながら,眼底クリニックのマニュアル,あるいは図譜など多彩な性格を併せ持っている。一言でこの本の特質を言い表すなら,モノグラフを教科書のオブラートで包んだ本ということができる。最初に京大グループと書いたが,実質的にはその多くが一人の著者によるものであり,この本の中に,加齢黄斑変性,そして眼底診療への著者の熱い思いが込められており,その結果としてページ数が増えたものと理解される。
本は5章から構成されており,第1章の基礎知識から始まる。ここを読むだけで,この本がいかに丁寧に書かれているかが理解できる。黄斑の定義から始まり,加齢黄斑変性の疾患概念,分類などすべてにおいて,現時点での最も妥当であろう考え方が示されている。この「考え方」は,膨大な内外の文献を渉猟したうえでの著者の意見であり,説得力があり,バランスのとれたものとなっている。このバランスの良さ,客観性を保とうという姿勢は全編で貫かれており,このような芸当は,いま流行の分担執筆本ではなし得ないことである。
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