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特集 基礎研究から難治性眼疾患のブレークスルーをねらえ
糖尿病網膜症
Proliferative diabetic retinopathy
野田 航介
1
Kosuke Noda
1
1北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
pp.1968-1972
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103480
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はじめに
近年の眼内血管新生性疾患に対する治療においては,基礎研究の成果が実に大きなブレークスルーをもたらしたと思う。いうまでもなく,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)に対する阻害薬の臨床応用である。本項で論じる増殖糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy:PDR)においても,ベバシズマブの導入(off-label use)によってその治療法は一変した。増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の数日前にベバシズマブを前投与することによって,新生血管の退縮が得られた状態で手術が施行できるようになり,以前に比べて術中出血が圧倒的に少ない状況で増殖膜処理が行えるようになった。このベバシズマブによる補助療法の出現によって,術中・術後の合併症が減少し,患者の負担も大幅に軽減されるようになったことは本当に素晴らしいことだと思う。基礎研究の成果は,時に大きな変革を臨床の現場にもたらすことを示した好例である。
VEGF阻害薬によって上記のような術前処置が可能となった現在,同薬剤とは異なる経路での血管新生抑制というテーマが本領域における次なる焦点と考える。本稿では,その観点において筆者が行った検討について述べる。また,検討中の糖尿病モデル動物について簡潔に紹介する。
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