特集 緑内障診療―グレーゾーンを越えて
Ⅱ.治療編
1.治療時期
ベースラインデータ収集と目標眼圧設定の理論と現実
武田 久
1
,
杉山 和久
1
1金沢大学医薬保健研究域視覚科学(眼科)
pp.213-216
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102958
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目標眼圧設定の理論
緑内障診療ガイドライン1)によると,「緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されている。これまで数多くなされた疫学調査や臨床研究の結果から,緑内障の進行,すなわち視野障害の進行を遅延しうるものとして,眼圧下降が唯一エビデンスのある治療法とされている。しかし,緑内障はその病型も隅角が開放か閉塞か,原発性なのか続発性か,また,個々人の治療前眼圧や病期も異なることから,治療に際してその方針をどこに定めるかの選択に苦慮することがしばしばある。
眼圧を下降させる手段は,薬物,レーザー手術および観血的手術があるが,眼圧をどのレベルに定めるか,絶対値でどの程度を目標値とおくのか,または治療前眼圧をもとにした眼圧下降率を定めて,目標の眼圧値を決定するのかについて一定の見解は定まっていない。目標眼圧の概念は,今後の緑内障性視神経症の進行が停止ないしはきわめて緩徐になると思われる眼圧値を作為的に定めて,それを目標に治療しようという考え方である。
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