やさしい目で きびしい目で・103
黄金時代
久保田 明子
1
1アイクリニック自由が丘
pp.1169
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102328
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金沢医科大学眼科医局を去り5年が経ちますが,最近よく大学病院で働いていたときのことを思い出します。一生足を向けては眠れないほどお世話になった師匠たち,姉妹のような関係の同僚たちと過ごした9年間です。
思い出はたくさんありますが,中でも一番記憶に残っている出来事は,初めて私が統計絡みの発表をしたときのこと。今でこそ人並み程度にはExcelを使いこなせますが,あの当時の私にはその便利さがまったく理解できず,まさに「豚に真珠」。慣れることがやっとである私の焦る気持ちなどお構いなしに,より意義のある発表をさせようと上司からは新たな指令が容赦なく飛んできます。検定を繰り返す日々が続き,ポスターは未完成状態のまま,とうとう学会前日がやってきました。「病棟の仕事は私たちに任せておけ!」と力強い言葉をかけてくれた同僚たちのおかげで貴重な準備時間を得たものの,いまだゴールが見えない不安から泣きべそをかきながら医局で格闘していた私。そんな時,1人,また1人……と自分の仕事はもちろん,私の病棟業務までこなして疲れているはずの同僚たちが,約束もしていないのに各自ノートパソコンを持ってわらわらと集ってきてくれたのです。「私は何を検定しようか?」「私は?」「とりあえず,お夕飯何か頼まない?」「できているところまでプリントアウトしてくるよ」と,何も言わずにてきぱきと手伝いだしてくれました。また結果を相談するため上司の部屋に行くと,たくさんの仕事を抱えてお忙しいはずなのに,パソコンの画面には私の発表絡みのファイルが開かれていました。
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