特集 生きることを支えるターミナルケア
ターミナルを「黄金の時間」に―専門職としての看護にできること
土橋 律子
1
1支えあう会「α」
pp.912-920
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100351
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私は,過去に多重がん(子宮体がん,卵巣がん,結腸がん)にかかり,入退院をくり返していた。この間,看護師としての仕事や生活の中断,治療で加えられる心身の苦痛,再発や転移の不安,死を間近に意識する恐怖や,「がん患者」というレッテルを貼られた理不尽で厄介な自分の立場など,当事者となってはじめて知るなんとも言いようのない気分を味わった。それは病の中で人が生き,死んでいくプロセスの意味をとことん考えさせられる貴重な体験であり,本当に求められている看護とはどういうものかを問い直す機会でもあった。
人の「生老病死」は必然であり,「がん」が治る,治らないを超えたところにいのちはある。したがって,本来の看護とはこの「いのち」に寄り添うことであると思うが,現状のがん医療には,退院後のサポートや再発転移したがん患者とその家族への精神的サポートが少ないことから,多くの「がん難民」が生み出されている。
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