特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム
眼科研究こぼれ話
昔話「“もれきゅらー”って?」
緒方 奈保子
1
1関西医科大学付属滝井病院
pp.57
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101991
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大学院を終了し2年ほどたった頃,主人が留学することになりました。主人が師事していた教授は免疫学・骨髄移植が専門,眼科とは縁がなく,留学先近くには適当な眼科学教室も見つかりませんでした。そんなある日その教授に呼ばれました。「君ももれきゅらーするなら,研究のポストを用意してもらうよ。」思わず「はい」と答え部屋を出ました。「何だった?」「もれきゅらーするなら,お給料くれるって!」「へ~ェ」「ところで,もれきゅらって何?」「……(絶句)。そんなことも知らずイエスと答えたのか?!」「だって,教授にノーって,何だか言えないんだもん……。」
Molecular biology(分子生物学)の手法はいまではなくてはならないものですが,その頃はまだPCRが普及しはじめた「はしり」の段階。大学院で電顕ばかりみていた私にはまったく縁のないものでした。突然基礎の教室に移ってmolecular biologyの基礎特訓を受け留学しました。留学してみると免疫学と聞いていましたが,何と専門はAIDS。毎日AIDSマウスの採血と脾臓を摘出してサイトカインのPCRです。マウスの採血は,眼球を鑷子で引きちぎり眼動脈からの出血を集めるという方法です。眼科医としては心痛みながらも,毎日眼球を鑷子で引きちぎり捨てていました。
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