特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム
眼科研究こぼれ話
臨床研究の楽しさ
佐藤 美保
1
1浜松医科大学
pp.45
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101988
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医学研究を臨床研究と基礎研究に分けて考えると,臨床研究はすぐに結果が日常の診療に生かされるという点で親しみやすい反面,興味深い研究の多くはすでに誰かによって結果が出されているという問題がある。多数の症例を集めて行う臨床研究であっても,「無作為二重盲検」という条件が付いてくると一気にハードルが高くなり,個人のレベルでは実施不可能になる。
私が留学していたインディアナ大学では,フェローは自分たちが興味のあるテーマをリストにして壁に貼り出していた。例えば「未熟児網膜症は輸血後に悪くなるといわれているが,輸血後何時間で悪くなるのか」「斜視手術のときに,筋肉がちぎれるのはどれくらい引っ張ったときか」「子供は何歳になったら,友達の斜視に気づくようになるのか」などといったテーマが30項目くらい並んでいたのである。一見,教科書に書かれていそうなものやふざけたような疑問,でも実は誰もまだ確かめたことがなくて,言われてみれば興味のあるものばかりだった。そしてそれらを確認するために,いろいろな方法を行った。「今夜,未熟児に輸血をする」と聞けば眼底カメラ(当時は手持ちの撮影の難しいカメラしかなかった)を持ち込んで,新生児科医の顔色を伺いながらNICUで何時間もかけて眼底写真を撮ったり,斜視手術のときに切除した筋肉をちぎれるまで引っ張ったりと,気力と体力でいろいろなことを試みた。
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