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VII.Dr. Herbert Olivecronaについて
1936年米国から欧州に渡つて私はまず前年からの予定のBerlin Olympicを十分enjoyする日常をもつた。その間StockholmのOlivecronaの都合を問合せ,その日どりをうち合せ,OlympicのあとでちよつとStut—tgartに隠栖中のEnderlen先生を見舞い,そのあとで9月初旬にスウェーデンに行つた。いろいろのスウェーデンの見学については省略する。主目的としてSerafi—mer Lazarettet病院にOlivecronaを訪ね,その脳手術を見学したのである。
開頭にはde Martelとスウェーデン製のGigli wire sawいわゆるOlivccronaのDrahtsägeあるいはStille Gigli wire sawといわるるもので骨孔間を切る他は,まつたくCushing流であり,Dandyなどと同じ技倆実力の所持者であることがすぐにみてとれた。三叉神経根切開,小脳腫瘍,脊髄腫瘍等を見たが,中にも左のSphenoidal ridgeのMeningiomは難かしいのを完全にうまく別出した。棘状孔を楊子などでなく,尖の曲つた鑷子により綿栓をもつて填めてA.meningeamediaの止血をすること,Laminectomieでも脳手術でもたびたびH2O2を用いて止血すること,水中電燈で出血部を発見することなど新らしい試みもよく見ることができた。この手術を当目ドイツから講演に招かれたHamburgの老教授Nonneも見学した。これは世界的に有名な神経学者で,もう白髪の老教授であつたが,この小蜜柑大の中頭蓋窩の深いところのMeningiomの剔出を見ながらはじめてこういう手術を見たと心から三嘆しているのであつた。
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