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神経眼科の臨床研究で,近年最もインパクトが大きく,影響を与えたものの1つに,米国,日本,欧州などで行われた特発性視神経炎の治療スタディが挙げられる。私自身は,大きな影響を与えた臨床研究を行ったことはなく,そういう人間が研究こぼれ話などおこがましい。幸い,私は米国留学を行い,北米神経眼科学会に身をおき,“Journal of Neuro-Ophthalmology”のチーフエディターであるJonathan D. Trobe先生のもとで研修できた。その経験をここで述べたい。読者の参考になれば幸いである。
神経眼科臨床研究の第一歩は,一人一人の患者をていねいに診療することである。患者は半日に12人程度,すべて予約性で,新患が8割である。まず,レジデントやフェローがカルテを手に取り,病歴をていねいにとる。これはとても厳しく指導され,こと細かく聞く。既往歴,家族歴はもちろん,内服薬もすべて聞き取らなければならない。その後,眼科的な視力,瞳孔,対光反射,眼位,眼球運動,視野,細隙灯顕微鏡,眼圧,眼底,血圧,神経学的検査を行う。それをTrobe先生にプレゼンし,そこでどう考えるか,意見を合わせディスカッションする。Neil Miller先生のところを見学したときは,その場で文献を検索したり,電話で専門の先生に意見を聞いていたのが印象深かった。その後患者さんを呼び入れ,Trobe先生が実際に病歴を再確認し,診察し,最終的に診断を下し,治療,管理へと至る。みな紹介された患者であるので,返事を書くのであるが,その際,病歴や内服など,すべての情報をそのなかに入れる。とても長い返書になってしまう。そのときは,なんて面倒くさいことをするのだろうと思っていたが,いざ自分で後ろ向き研究をする際に,その返書をみれば,すべてが書き込んであるので,いちいちカルテを調べることなく研究できるのである。
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