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連載 眼科医のための遺伝カウンセリング技術・11
遺伝カウンセリングと倫理問題(2)
Ethical problems in genetic counseling(2)
千代 豪昭
1
Hideaki Chiyo
1
1お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科特設遺伝カウンセリング講座
pp.1611-1622
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101912
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はじめに
前回の連載でビーチャムとチルドレスの原理・原則主義を紹介し,医療現場における倫理的課題の分析方法について述べた。倫理規範は,人間が社会生活を行うために善悪を基準に決めた基本的なルールに過ぎないと割り切って話を進めたので,「倫理」という言葉のなかに崇高な人間性とか道徳性を重視する読者には抵抗を感じられた方もおられたのではないかと思う。しかし,倫理学を背景とした理論や分析方法が,医療現場における医療従事者の現場判断に少しでも役立つことがご理解いただけたら幸いである。
今後,先端科学はますます発達するだろう。先端科学がわれわれの社会にどのような影響を与えるか,厳密な将来予測が大切である。倫理学は先端科学の将来予測を行うツールとしても有用であるというのが筆者の主張である。20世紀になって発達した応用倫理学の一分野である生命倫理学は生命科学,特に医療科学を主な舞台として発達してきた。遺伝医療の現場では生命倫理学で議論される材料に日常茶飯事のように遭遇する。遺伝カウンセラーは毎日のように倫理的課題に直面しているのである。
今回の連載では日常の事例から倫理分析の実際を紹介したい。なお,事例の紹介については個人情報保護の立場から,個人データを一部変えてあることをお断りしておきたい。
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