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はじめに
糖尿病黄斑浮腫の硝子体手術は,光沢のある肥厚した後部硝子体膜を伴う症例に対する手術成績が1992年にLewisら1)によって報告されてから盛んに行われるようになった。それ以降,後部硝子体剝離(posterior vitreous detachment:以下,PVD)の起きていない眼に,PVDを作製して視力向上や浮腫軽減に効果があったという報告2~4)や,PVDがすでに起きている眼に単純硝子体切除を行っても改善効果があったという報告5,6)があり,硝子体手術自体が黄斑浮腫の改善に効果があるということは共通した見解である。
内境界膜剝離を併用した硝子体手術は,1999年に矢那瀬ら7)により報告されてから行われるようになったが,浮腫は改善するものの視力は硝子体手術単独と比べ有意な改善は得られないという報告が多い8~10)。しかし,内境界膜を電子顕微鏡で観察すると,糖尿病網膜症眼では肥厚し,その表面の硝子体皮質の残存,fibrous astrocyteや線維芽細胞などの細胞成分の付着がみられ11,12),内境界膜を剝離することはそれらの物質も同時に除去し増殖の場を除去するという点で意味のあることと思われる13)。
一方最近では,抗VEGF抗体であるベバシズマブ(アバスチン(R))は2006年に虹彩血管新生や硝子体出血に対しての臨床応用が報告14,15)されてから盛んに行われるようになった。また,その血管透過性抑制作用を期待して糖尿病黄斑浮腫にも応用されている16)。
また,薬物療法として硝子体手術に代わる可能性があるものの1つにプラスミンがある。プラスミンは非特異的蛋白分解酵素であり,後部硝子体膜と網膜との間の橋渡しをしているラミニン,フィブロネクチンなどを分解することでPVDを起こす働きがある17~19)。今後は薬物療法が趨勢になってくるかもしれない。
本稿では,糖尿病黄斑浮腫に対する標準的な治療法である硝子体手術に内境界膜剝離を併用した手術手技について詳述する。
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