REVIEW & PREVIEW
時間治療の現状と将来
大戸 茂弘
1
1九州大学大学院薬学研究院薬剤学
pp.878-881
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105182
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最近の動向
社会の少子化および高齢化が進むなかで,集団の医療から個の医療へとその重点が移りつつある.現在,個体間変動要因の代表例である遺伝子多型に関する研究およびその治療への応用は確立されつつあるが,遺伝子診断のみでは説明できない現象もある.したがって,医薬品適正使用のさらなる充実を図るには,個体間変動のみならず個体内変動に着目した研究の充実は必至である.こうした状況のなかで,投薬時刻や投薬タイミングにより薬の効き方が大きく異なることがわかってきた(時間薬理学)1,2).最近では,医薬品の添付文書などに服薬時刻が明示されるようになってきた.生体リズムを考慮した時間制御型DDS(drug delivery system),服薬時刻により処方内容を変更した製剤,生体リズム調整薬が開発されている.その背景には時計遺伝子に関する研究の発展が挙げられる.体内時計の中枢は,視神経が交差するSCN(suprachiasmatic nucleus)に位置し,時計遺伝子により制御されている.睡眠障害,循環器疾患,メタボリックシンドローム,癌などの疾患発症リスクおよび薬物輸送・代謝リズムにも時計遺伝子が深くかかわっている.治療において,これまで蓄積された時間薬理学的所見を整理して体系化していく必要がある.
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