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はじめに
成人視覚障害者のリハビリテーション,ロービジョンケアは職業的自立にあるといっても過言ではない。その意味において,視覚障害者の雇用・就業問題は重要である。
平成13(2001)年の厚生労働省の調べでは視覚障害者30,1000人の就業率は23.9%で,そのうち33.3%が伝統的職業として三療(あんまマッサージ指圧,はり,きゅう)に従事している1)(図1)。また,電話交換手,コンピュータプログラマー,システムエンジニア,録音ワープロ速記,ヘルスキーパー(企業内理療士)としても働いている。しかし,三療業には晴眼者の進出が著しく,電話交換手やコンピュータプログラマーなどにしても,その職域は年々狭くなり,厳しい状況である。一方,OA機器や補助具などの開発,視覚障害者自身の高学歴化などとも相まって,実際には,さまざまな職業に就いている。特に近年のIT技術の発展は視覚障害者にも恩恵をもたらし,ペーパーレス化が進むなかで,インターネットを活用した新たな職域も生まれている。また,三療関連では,厚生労働省が視覚障害者の雇用マニュアルを作成した特別養護老人ホームなどにおける機能訓練指導員について,今後の雇用拡大が大いに期待されている。
日本障害者雇用促進協会の推定では,一般企業で常用雇用されている身体障害者は全体では11.7%であったが,視覚障害者は7.5%と身体障害者のなかでも最も低い率であった2)。このような視覚障害者の雇用環境ではあるが,今日のデフレ時代のわが国においては,健常者でさえ厳しい環境のなかで,視覚障害者はなおさらその厳しさにさらされている。それゆえに視覚障害者の雇用の維持・継続が最優先されなければならず3),そのための医学的な治療,福祉制度の活用,社会復帰のための生活訓練などはその前提におかれる。退職に追い込まれることなく働き続けるには,在職中の視覚リハビリテーションが不可欠で4,5),医療機関,訓練施設などの連携の下に,職場の不安感や負担感を取り除き,多くの関係者の努力があってはじめて実現する。視覚障害者だけの力には限界があるため,早期に医療機関における情報提供など,適切な支援が必要である。それゆえ,通院・通所による生活指導・訓練が求められている。しかし,多くの訓練施設は地域が限定され,通所が困難であるため,入所による日常生活訓練を行っているところがほとんどである。このため,施設に入所してくる多くの視覚障害者はすでに仕事を辞めているか,休職している。訓練終了後,彼らは新たに職場を探し,仕事を求めようとするが,残念ながら仕事に就くことは不可能に近い。
本稿では,休職した視覚障害者にロービジョンケアを積極的に行い,患者団体など当事者による自助グループや訓練施設などと連携し,原職復帰を果たした症例を紹介し,職場復帰における問題点を考えてみる。ここでいう原職復帰は,発症前と同じ職務に従事することを意味している。
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