特集 手術のタイミングとポイント
Ⅳ.角膜
羊膜移植の適応と術式選択
片上 千加子
1
1神戸海星病院眼科
pp.259-266
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101002
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はじめに
羊膜が難治性オキュラーサーフェス疾患の眼表面再建に用いられるようになって約10年が経過し,いまでは羊膜移植も多くの施設で行われている。
羊膜は胎盤組織の一部で,生体内の基底膜のうち最も厚い。羊膜は上皮再生のための基質としてはたらき,炎症・新生血管の抑制作用,癒着防止作用があるとされ,また抗原性が低く,移植後の免疫学的拒絶反応を起こさない。さらに,羊膜は帝王切開時に大量に入手でき,凍結保存が可能である。このような利点を生かし,他科領域では古くから手術に応用されてきた。眼科領域でも羊膜を用いた手術によって,眼類天疱瘡,Stevens-Johnson症候群などの瘢痕性角結膜上皮症,化学傷,熱傷,再発翼状片,角膜穿孔,結膜腫瘍,緑内障術後の濾過胞漏出など,従来きわめて難治であった疾患の治療成績は飛躍的に向上した。また,従来角膜移植を必要とした疾患に対しても,羊膜移植により,治癒あるいはドナー角膜を確保する時間を稼ぐことが可能となり,ドナー不足のわが国ではその恩恵は大きい。
羊膜移植の有効性については数多くの報告がある1~3)。しかし,羊膜移植は,その適応,術式,術後管理が的確に行われなければ,時に予期せぬ合併症を招くこともある。本稿では羊膜移植の適応疾患,手術手技,奏効機序について概説したい。
なお,羊膜移植はヒトの生体組織の移植手術であり,各施設の倫理委員会の承認を受けて行う必要がある。
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