特集 手術のタイミングとポイント
Ⅳ.角膜
深層角膜移植術の適応と術式選択
杉田 潤太郎
1
1眼科杉田病院
pp.203-209
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100993
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はじめに
角膜移植は,透明であるべき角膜の混濁や菲薄化による角膜形状異常を改善することが目的である。角膜混濁が内皮細胞代償不全によって起こる水疱性角膜症には,ドナー角膜の内皮細胞を移植する全層角膜移植(penetrating keratoplasty:以下,PKP)が,主として行われてきた。しかし,内皮細胞機能が保たれている場合には,表層角膜移植(lamellar keratoplasty:以下,LKP)で対処できる可能性がある。
LKPには,術後内皮性拒否反応がないこと,ドナーの内皮細胞が必要なく保存角膜でもよいこと,虹彩前癒着などの内眼性合併症のないことなど角膜移植としての利点は多い。手術原理は表層角膜実質を切除し,この欠損部分に見合ったドナー角膜片を充填することである。このとき角膜実質の切開面が不整であれば,実質接合面に形成される瘢痕も大きなものになり,十分な術後視力回復が得られにくくなる。これがLKPの唯一最大の欠点である。
深層角膜移植術(deep lamellar keratoplasty:以下,DLKP)はLKPの最大の欠点であった術後視力不良の改善を図るために,ホスト側の病的実質をすべて除去し,少なくとも瞳孔領は均一で滑らかなデスメ膜のみにすることにより,術後瘢痕形成を最小限にしようとする手術法である1)。
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