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はじめに
光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が眼科で使われ始めて数年が経過している。眼底の断層像を非侵襲で得ることのできるこの装置は,糖尿病網膜症,加齢黄斑変性などの病理の解明に有用な装置として普及し,網膜・脈絡膜疾患診断においては不可欠なものとなった。第1世代のOCTは解像度,操作性,機能面などにおいて改善の余地があったが,第2世代になると測定ポイント数を増やすことで横方向の分解能を上げ,さらに網膜厚,神経線維層厚を自動測定し,緑内障診断を行うことのできるソフトウェアも充実してきている。また,前眼部の断層像を捉える装置も開発されており,OCTの技術応用はますます眼科の診断に不可欠な技術となっている。
OCTは1990年丹野1)が考案し,続いてHuangら2)によって開発された。これは超音波エコーの分解能の1/10程度の10~20μmと優れたもので,直ちに眼科分野で実用化され,また近年は皮膚診断用や内視鏡に取り付けての消化器・循環器系の診断にも応用され始めている。このOCTによって得られる断層像は1次元走査線上でのもので,網膜の一断面を評価するものである。つまり従来のOCTは2次元情報であり,広いエリアの画像情報を得ることができず,診断するうえでの制限となっていた。これを広い領域の断層像取得,すなわち3次元化のためにはスキャン部位を変えて数十~数百枚の画像を取得し,ボリュームレンダリングなどの技術で再構築する必要があった。これには測定に長い時間を要し,アライメントも煩雑となり,高精度の3次元画像を得るに至っていないのが実状である。
1998年,Kent大学のPodoleanuら3,4)によって,2次元的にOCT像を取得する方法が考案され,この原理を用いることにより3次元的に網膜を評価,診断する可能性が生まれた。これはガルバノミラーにより測定光を高速に眼底スキャンし,リファレンスミラーの光路とコヒーレンス長内で一致した場合に得られる干渉信号により2次元的にOCT画像を構築するという方式(C-scan)である。さらにリファレンスミラーを光軸方向に移動することで奥行き方向の情報を得,これらから網膜を3次元情報として構築することができる。この方式によれば,従来の網膜断層画像(B-scan)のみならず,眼底の任意の深さごとにtransversal(C-scan)画像を得ることができるため,従来の2次元断層像では撮影できない症例も観察することが可能となり,網膜組織の立体構造の撮影,表示ができるようになる。
今回筆者らは,Podoleanuらの考案したOCTにスキャニングレーザーオフサルモスコープ(SLO)を組み合わせることで,立体的に網膜診断を可能にするOCTオフサルモスコープを開発した5,6)。
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