特集 眼科における最新医工学
I.診断機器への応用
OCTの原理と応用
萩村 徳一
1
1群馬大学医学部眼科学教室
pp.14-17
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100185
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はじめに
眼底は直接観察できる器官でありながら,その組織断層像を得ることは困難であった。すでに,X線CT,核磁気共鳴CT(nuclear magnetic resonance-CT:以下,NMR-CT),超音波CTなどの医用画像化技術は,臨床で実際に用いられておりその恩恵は多大であるが,これらの技術の空間分解能が0.1~1mm程度であり,網膜の断層像を得るには低解像度である。臨床応用ではさらに高い空間分解能が求められている。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は,近赤外光を使用するため人体に対しては無害であり,ミクロンオーダーの解像度をもち,網膜断層検査装置として注目されてきた。OCTの原理は山形大学工学部の丹野直弘教授によって世界で初めて発表され,国内特許がとられた。その後,マサチューセッツ工科大学のグループが眼科用OCTスキャナーとして実用化した。国内の第1号機は1997年4月に,筆者の所属する群馬大学眼科に設置され,その後またたくまに全国に広がった。そして,2002年春には解像度約2倍,走査速度約5倍に改良されたOCT3(stratus OCT)が発表された(表1)。現在,国内では約400台のOCTが稼働している。
断層像は通常のモードでは疑似カラー表示され,あたかも光学顕微鏡切片を見ているかのようである。しかし,この画像は赤外線を眼内に送り込み,そのエコー情報から構成されたもので,組織切片そのものを見ているわけではない。画像の解釈にはOCTの原理を知る必要がある。ここでは,OCT画像の原理,正常眼所見について述べる。
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