臨床研修セミナー 外来診療指針
I.妊婦外来
胎児モニタリング外来
NST
原 量宏
1
Kazuhiro Hara
1
1香川医科大学母子科学教室
pp.793-798
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904883
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分娩監視装置および超音波診断装置の普及により,妊娠の管理法は本質的にかわりつつある。従来のいわゆる妊婦外来においては,胎児の状態を直接評価する手段がなかったこともあり,その名称どおり妊婦の血圧や体重,尿蛋白の有無,もしくは子宮底長など,妊婦の管理が中心とならざるを得なかった。超音波診断装置により,胎児の大きさ,形,さらに胎動などが直接評価可能となり,また分娩監視装置により胎児心拍数が連続的に検出記録できるようになると,必然的に妊婦の管理から胎児の管理へ重心が移動し,胎児モニタリングという概念が生じてきた。我々の施設においては開院以来,できるかぎり胎児の直接的な情報を利用することを原則とし,全妊婦を対象として,超音波診断による妊娠週数,胎児発育,胎動,羊水量などのスクリーニングを行い,妊娠中期以降には妊婦全例にNSTを施行している。その結果,いわゆる潜在胎児仮死の症例はすべて未然に発見され,入院,安静の対象となり,分娩開始後に突然late decelerationが出現してくるような症例は皆無となっている。NSTを全例に施行することは,潜在胎児仮死の診断のみならず,切迫早産の早期発見や早産の予防にもおおいに役立っている。妊婦にとっても超音波画像による胎児の視覚的な認識に加え,NSTにより胎動や心拍数変動をより具体的に認識することによって母性意識の早期確立に役立っており,間接的に安全な母児管理の実現に寄与している。
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