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妊娠分娩の管理法は時代とともに変遷し,現在では分娩監視装置による胎児心拍数と子宮収縮の連続的な評価が最も信頼性の高い方法として普及している。われわれの施設においては,理想的な周産期管理を目的として,開院以来コンピューターによる周産期管理システムを開発・導入し,分娩中の妊婦のみならず,合併症の管理目的で入院中の妊婦に関しても24時間の監視体制を実現している。同様のシステムは妊婦外来においても稼働しており,ハイリスク妊婦はもちろん,すべての妊婦のスクリーニングに役立っている1〜3)。このように病院内において密度の高い管理が実現してみると,同システムの機能を通信回線を用いて外部に拡張することにより,院外の妊婦に関しても院内と同様の管理を実現しようとする構想にいたる。胎児心拍数と子宮収縮に関する情報を,電話回線を用いて家庭から病院へ送ろうとする試み,いわゆるホームテレメトリーに関しては,以前よりいくつかの報告がなされているが,技術的な問題から実用化には至らなかった4〜8)。分娩監視装置の小型化,コンピューターによる周産期管理システムの開発,および通信ネットワークの普及など,関連技術すべての発達により,ようやく臨床で利用可能なホームテレメトリーシステムが実現可能となった。ホームテレメトリーを実際に運用してみると,合併症妊婦に関してのみならず,遠隔地に在住の妊婦や通院が困難な妊婦にとって,予想した以上に利用価値が高い。ホームテレメトリーに必要な技術的基盤のかなりの部分は,従来から開発してきた周産期管理システムと共通する。本稿では香川医大における周産期管理システムの概要を含め,ホームテレメトリー開発における技術上の問題点,および今後の展望に関して解説する9,10)。
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