今月の臨床 胎児・新生児のBrain Damage
新生児期の脳損傷
5.無酸素性脳損傷と虚血性脳損傷
村松 幹司
1
,
山田 恭聖
1
,
戸苅 創
1
1名古屋市立大学小児科
pp.1188-1190
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903404
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胎児・新生児期の場合には,一般的には虚血と低酸素・無酸素の脳損傷を厳密に分けるのは非常に難しいと思われる.それは胎児期の脳血流が,動脈管,卵円孔,静脈管などのシャントや,臍帯・胎盤といった要因が循環動態に影響を及ぼすからである.新生児期では急速な肺血管抵抗の低下による肺血流量の増加や,前述のシャントの閉鎖など大きな動態の変化を経ることになる.正常な経過においてもこのような多くの要因によって変化するが,これが病的状態となるとさらに複雑になる.たとえば,仮死など低酸素血症に陥ると心拍出量は低下するが,下半身の血管抵抗は増して脳・心臓などの血流はそれまでの2〜3倍となる.こうした調節機能はautoregulationと呼ばれているが,新生児にはautoregulationはあるが,未熟であるとともに予備能力の乏しさから容易に破綻しやすい1).そのため新生児期の脳損傷に関しては,低酸素性虚血性脳症という大きな概念でのみくくられており,病変は低酸素症の負荷の程度,持続時間,様式や回復状況などの外因と,成熟度に伴う組織代謝活性や局所微小循環などの素因との組み合わせによって複雑な生じ方をする2).そこで今回われわれは,日齢7のラットモデルを用いて実験的に低酸素状態の脳損傷と虚血状態の脳損傷を比較検討してみた.
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