連載 新生児学基礎講座[臨床編]・26
低酸素性虚血性脳症
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門
pp.1024-1033
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900456
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1.低酸素性虚血性脳症とは
低酸素性虚血性脳症は成人においても見られる病変であるが,出生を境とした時期に起こる仮死(Asphyxia)にともなう低酸素性虚血性脳症(Hypoxic-Ischemic-Encephalopathy, HIE)は,恒久的な脳障害の最も大きな原因として重要である。仮死にともなうHIEの約50%は出生前(胎児仮死,Fetal Distress)に,40%が出生時(出生時仮死,Birth Asphyxia),10%が新生児期の重症な無呼吸発作や緊張性気胸などにともなうものである。低酸素性によって起こる脳障害は無酸素脳症(Hypoxic Encephalopathy)と呼ばれてきたが,同時に組織の虚血性(Ischemic)の変化も重要な病態であるところから,両者を含めたHypoxic-Ischemic-Encephalopathyと呼ばれるようになった。前号で述べたように,未熟児におけるAsphyxiaにともなう病変で最も重要なものは脳室内出血(IVH)であるが,成熟児においては,脳組織の低酸素性虚血性病変そのものが種々の重篤な異常を引き起こす。新生児は脳の発育・成熟の度合が在胎週数によって,また各部位によって異なるため,在胎週数や仮死の程度によって障害を受ける部位や性質が異なることが特徴的である。
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