今月の臨床 卵管性不妊症への対応
ARTによる治療
2.卵管性不妊症の治療におけるGIFTの有用性
井上 正人
1
,
小林 善宗
1
,
本田 育子
1
,
内海 靖子
1
1山王病院リプロダクションセンター
pp.858-861
発行日 1998年6月10日
Published Date 1998/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903318
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卵管性不妊の治療は,肉眼的な卵管形成術から,microsurgery,腹腔鏡下手術,経頸管的卵管開通術と技術的には大きく進歩した.しかし,術後の妊娠率は不妊手術後の再疎通術を除けば,決して満足のいくものではない.とくに卵管留水腫では,疎通性は90%以上回復するのに,妊娠率はせいぜい30〜40%である.このような症例では,卵管采による卵子のpick-up障害が術後の重要な不妊因子と考えられる.
術後卵管性不妊に対しては,われわれはIVF—ETをfirst choiceにしている.卵管性不妊の病態は多様であり,そのすべてに対応できるのはIVF-ETだけである.IVFは外来ベースで手軽にできるのも大きな魅力である.しかし,IVF-ETの成績も必ずしも満足のいくものではない.重度の卵管性不妊と男性不妊を除けば,IVF-ETが従来の治療法に比べてより有効であるという確証はまだないとさえいわれている1).IVF-ETの最大のウィークポイントは受精卵の培養の問題である.in vitroの培養条件は,残念ながらいまだinvivo(卵管環境)には遠く及ばない2).その理由としては,胚移植を4分割卵という非生理的な状態で行っている事実を挙げるだけで十分であろう.IVF-ETで受精卵を通常4細胞期,すなわちinvivoよりも約2日早く子宮内に移植するのは,それ以上in vitroで培養すると胚の質が低下するからである.
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