指標
配偶子操作による不妊症の診断,治療
井上 正人
1
,
小林 善宗
1
,
本田 育子
1
,
淡路 英雄
1
,
松山 毅彦
1
,
津田 明男
1
,
藤井 明和
1
Masato Inoue
1
1東海大学医学部産婦人科教室
pp.825-836
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208063
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不妊症の診断,治療における最近の進歩はめざましい。なかでも配偶子操作の臨床応用が特記されよう。まず診断面では,Ca ionophore A23187を用いたzona-freehamster egg sperm penetration test (ZSPT)の開発により,精子の受精能力をほぼ正確に判定できるようになった1)。このbioassayは乏精子症の診断にとくに有効である。ZSPTはin vitroにおける精子の受精能力だけでなく,妊孕性の判定にもきわめて有効である2,3)。不妊夫婦の予後は,精液検査所見のいかんにかかわらず,ZSPTの成績によって決まってくるといっても過言ではない。女性性器内における精子の輸送も重要な問題である。Huhner testにかわる正確な精子輸送の検査として,AIH—腹腔鏡による腹水中精子回収試験peritoneal sperm recovery test (PSRT)が登場してきた4,5)。AIHは不妊症の治療に汎用されているが,PSRT陰性すなわち卵管内精子輸送障害を示す症例は決して少なくない。PSRTはZSPTと同様,男性の妊孕性の診断に今後活用されていくものと思われる。
治療面では,体外受精—胚移植IVF-ETの実用化が最大の進歩であろう。最近,配偶子卵管内移植GIFTや体外受精卵卵管内移植IVF-ETといった新たな方法も開発されてきた6)。
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