今月の臨床 新生児診療—産科医のためのポイント
新生児蘇生法
3.挿管のタイミングと器械換気法
猪野 雅孝
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門
pp.1135-1137
発行日 1996年9月10日
Published Date 1996/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902652
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出生直後の呼吸器系・循環系の適応生理と体温の変化
新生児仮死の際に有効な蘇生を行うためには,出生直後の呼吸器系・循環系の適応生理と体温の変化について十分理解している必要がある.
出生時の第1呼吸時には約60cmH2Oという高い圧が必要である.肺胞が開き,サーファクタントの働きで肺の含気量が増えるとともに,吸気圧は低くなる.第1呼吸によって肺が開くと,次に第1啼泣が起こる.児が声門を少し閉じて泣くことにより,陽圧が加わり,均一に肺胞を開く働きをする.第1呼吸がないときに人工呼吸を行う場合,30cmH2O以上の圧がかからないような安全弁のついたバッグでは,出生直後の肺を開くことはできないし,また,挿管後に陽圧を加えずに,いわゆる「吹き流し」の状態にすると,肺胞を開く機序が妨げられ,かえって状態が悪くなることがある.
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