今月の臨床 乳房—管理のポイント
乳汁分泌
2.早期授乳と母児の絆
山内 芳忠
1
1国立岡山病院小児医療センター第1小児科
pp.882-884
発行日 1996年7月10日
Published Date 1996/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902586
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分娩直後の母親のとる行動には共通性がみられる.母親はまず指先でそっと,次いで手で児の四肢,体幹にふれ,そして児を胸に抱き,乳首を含ませる行動をとる.この行動のパターンは,ほぼ一定しており,母親による差が少ないことが報告されている1).このような行動,つまり母性行動は育児の原点であり,生後における母と児の絆の確立の始まりでもある2).この母性行動を小林1)は母子関係の精神心理的な側面を文学的に表現したのが「母と児の絆」であり,小児科学的には「母子結合の成立した状態」と表現している.母子結合は母性が確立する面(母親がわが子に対して愛情をもつ)と,わが子が母親に対してもつ愛情(アタッチメント)が完成する面との2面がある.母子結合の成立は,母児間における感覚を介しての行動のやりとり,情報交換によって行われるとされ,これを母子相互作用と呼んでいる.したがって,このためにも母と新生児が,分娩直後からできるだけ長く,密着した状態で一緒にいられるように配慮することが最もたいせつである.
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