連載 産科外来超音波診断・12
妊婦外来での超音波スクリーニング—胎児肺野の異常:子宮内胎児治療の現状と展望
伊原 由幸
1
,
清水 卓
2
1神戸市立中央市民病院産婦人科
2清水産婦人科
pp.1557-1562
発行日 1995年11月10日
Published Date 1995/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902342
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胎児の胸腔を長期間占拠するような病変は肺低形成の原因となる
胎児胸部の異常は肺野の異常と心臓の異常に分かれるが,心臓については別稿で述べるので,今回は肺野の異常について述べる.胎児観察の基本的断面のひとつである心臓4腔面を含む横断面において,肺野は本来均質な領域であるので,肺野に異常なエコーが出現すれば比較的容易に発見できる.具体的に念頭に置いておくべき疾患は胸水,先天性横隔膜ヘルニア,嚢胞性肺疾患(Congenitalcystic adenomatoid malformation of the lung,気管支嚢胞など)である.これらの疾患に共通していることは,胸腔内にスペースを占める疾患であり程度の差こそあれ正常な肺の発育を妨げるという点である.
正常な胎児の肺の発育には,①胸腔内に肺が発育する空間が確保されていること,②適量の羊水が存在し胎児が呼吸様運動をすること,が必要である.これらの条件が胎児期の長期間にわたって障害されていると胎児の長期予後を致命的に悪くさせる肺低形成が起こる.肺低形成の成因として,①を阻害するものが今回述べる胎児胸腔内疾患である.また②を阻害するものは羊水過少であり,原因として胎児の尿生成異常(腎無形成:Pot—ter症候群など),尿路閉塞(Prune-Belly症候群など),長期間にわたる破水がある.
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