今月の臨床 頸癌,体癌—診療の現況
治療
19.子宮癌治療と性機能温存
藤本 征一郎
1
,
櫻木 範明
1
Seiichirou Fujimoto
1
,
Noriaki Sakuragi
1
1北海道大学医学部産婦人科
pp.1444-1447
発行日 1993年12月10日
Published Date 1993/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901548
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近年の悪性腫瘍に対する手術手技や麻酔学の進歩,術前化学療法(neo-adjuvant chemotherapy)の導入,高カロリー輸液などの支持療法の発達により婦人科進行癌症例に対して根治性の向上を目指した拡大手術が行われるようになった。一方では癌の発生やその進展様式の研究,リンパ節転移やその他の病理学的予後因子の解析が進んだことにより根治性を損なうことなく縮小手術を行うこと,また生理的機能温存を考慮した手術を行う努力が積み重ねられている。患者のquality of lifeの保全・向上を目指した医療という時代の要請のもとに機能温存手術が近時婦人科をはじめ外科的医療の中でキーワードの一つとさえなっている。
子宮頸癌手術に際しての機能温存の工夫として卵巣温存,骨盤内植物神経温存,腟短縮の防止などがあげられる。卵巣温存は骨粗鬆症,動脈硬化,卵巣欠落症状の予防に役立つ。広汎性子宮全摘出術(広汎全摘)における腟切除によりもたらされる腟短縮は性成熟期婦人においては性生活を術前同様に行うことをしばしば困難にし円満な夫婦生活の支障となることもある。本稿においては子宮癌治療における卵巣機能温存ならびに腟短縮防止策について,その手技的な面を中心に解説したい。
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