今月の臨床 不妊の原因を探る
無排卵・無月経
11.染色体異常と不妊
有馬 隆博
1
,
今村 利朗
1
,
和氣 徳夫
1
Takahiro Arima
1
,
Toshiro Imamura
1
,
Norio Wake
1
1九州大学生体防御医学研究所生殖生理内分泌学部門
pp.1182-1183
発行日 1993年10月10日
Published Date 1993/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901471
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新生児集団における染色体異常の出現率は約0.6%である。すなわち,新生児170人の出生につき1人が染色体異常児ということになる。染色体異常例は,たとえ成人に達しても不妊あるいは習慣流産を伴ったり,子供に染色体異常が伝わる可能性がある。常染色体異常例は,重篤な先天奇形を伴っているため,出生後の生存力は著しく低く,一部のダウン症などごく少数例を除いては,生殖年齢に達するものは少ない。
一方,性染色体異常の個体では,生存上の障害は軽微である。一般にターナー症,クラインフェルター症などは生殖細胞を欠き不妊である。原発性無月経症の女性の3〜5人に1人はターナー症またはそれに類似のX染色体異常を有し,無精子症の男性の5人に1人の割合でクラインフェルター症が発見されると報告されている(Hamertonet al 1971)。成人して子孫をつくる可能性のあるものとしては,XXX女性,XYY男性および均衡型転座など限られたもので,新生児集団でみられる染色体異常例の約半数にすぎない。しかも,XXX女性,XYY男性ともに妊孕性は正常人に比べ一般に低いといわれており,また精薄施設などに収容される例が多いので,子孫をつくる機会はかなり少なくなる。
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