今月の臨床 治療にてこずる感染症
MRSA
17.MRSA腸炎
石引 久弥
1
,
牛島 康栄
1
Kyuya Ishibiki
1
,
Yasuei Ushijima
1
1国立埼玉病院外科
pp.1085-1087
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901442
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillinresistant Staphylococcus aureus, MRSA)による重症腸炎が外科領域で術後腸炎として注目されている。MRSAはペニシリナーゼで分解されない半合成ペニシリンの代表的なDMPPC(methicillin)に耐性を示す黄色ブドウ球菌であり,数多くのβ—ラクタム系,アミノグリコシド系抗生物質にも多剤耐性を示すため治療効果を期待できる抗菌剤が少ない。感染防御力の低下した患者にMRSA感染症が発症すると治癒しにくいばかりか,MRSAの菌源となって病院内感染症を医療施設内に多発させる危険性が強い。さらにmec A遺伝子をもつ黄色ブドウ球菌はβ—ラクタム剤によりMRSAに誘導されるので化学療法上薬剤選択に注意しなければならない。しかし,MRSAは黄色ブドウ球菌であることに変わりなく,ヒトの常在細菌叢を含め自然環境に広く分布し,種々の酵素を産生,病原性も強く,軟部組織感染症から敗血症まで多彩な感染症を起こすという点は基本的に同一である。これらの点をふまえて,術後症例を主体としたMRSA腸炎について述べたい。
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