特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅱ.感染症の薬物療法
11.MRSA腸炎
横山 隆
,
児玉 節
1
,
竹末 芳生
1
,
山東 敬弘
1
1広島大学医学部総合診療部・第1外科
pp.74-75
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900944
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MRSA腸炎は臨床的には水様性下痢を必発,他に発熱,腹痛などの多彩な症状を伴い,便からMRSAが純培養状に検出されるものと定義することができる.多くが外科手術後に発生し,抗生剤の投与中に起こることから,各種抗生剤に耐性であるMRSAが選択され,増殖,発症すると考えられ,菌交代による抗菌薬関連腸炎と考えることができる.本症は初め胃切後の合併症として報告されたが,最近では内科患者からの報告1)もみられる.しかし,外科手術後の本症の中にはきわめて激烈な症状を呈し,死亡するものもあり,早期診断とともに適切な薬物療法が必須である.
本症の発症要因を検討するため,われわれの経験した17症例をみると,高齢者で,食道,胃,膵,大腸腫瘍など悪性腫瘍の手術後2〜7日に発症することが多く,術前の抗菌剤による腸管処置,H2ブロッカーの投与,胃手術による胃酸の低下,広域スペクトルを有する抗生剤の予防投与などが誘因として作用している.
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