今月の臨床 良性卵巣腫瘍—治療方針
治療方針の決め方
13.妊娠中の卵巣嚢腫の管理
古本 博孝
1
,
中山 孝善
1
,
青野 敏博
1
Hiroyuki Furumoto
1
,
Takayoshi Nakayama
1
,
Toshihiro Aono
1
1徳島大学医学部産科婦人科
pp.274-276
発行日 1993年3月10日
Published Date 1993/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901207
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妊娠に卵巣嚢腫が合併することはまれではない。廣田らは黄体嚢胞を含めた全卵巣腫瘍が妊娠に合併する頻度は9.9%に達すると報告している1)。当教室でも最近6年間(1983〜1988)の分娩2,381例中,79例(3.3%)に卵巣嚢腫の合併がみられた。しかしこの内64例(81%)は黄体嚢胞と考えられ,特別な治療を要しなかった。このように妊娠に合併する卵巣嚢腫はそのほとんどが機能性嚢腫であり,不要な治療を避けるためにも真性腫瘍との鑑別が重要である。一方,黄体嚢胞が否定されれば,その取り扱いは基本的に非妊娠時と同じであると考えられる。完全に悪性を否定する方法がない以上,ある程度の大きさの嚢腫はすべて外科的に摘出して,良性であることを確認する必要がある。しかし実際には流早産の予防,手術実施時期,境界悪性および悪性群の取り扱い,妊娠の取り扱いなどに苦慮することも多い。
ここではまず黄体嚢胞と真性腫瘍の鑑別について述べ,次いで当教室における妊娠合併卵巣嚢腫の管理について述べる。
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