今月の臨床 良性卵巣腫瘍—治療方針
治療方針の決め方
14.チョコレート嚢腫の取扱い
安達 知子
1
Tomoko Adachi
1
1東京女子医科大学産婦人科
pp.277-279
発行日 1993年3月10日
Published Date 1993/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901208
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卵巣チョコレート嚢腫は,卵巣に生じた子宮内膜症より発生した貯留嚢胞であるため,通常の新生物(neoplasma)とは異なった性格を有し,また,ホルモン依存性であることより,必ずしも開腹手術を第一選択としない。一方,子宮腺筋症や卵巣以外の部位へも外性子宮内膜症を合併していることが多く,そのため嚢腫のみの治療だけでは不十分であることが多い。本疾患の治療は従来までは大きく分けて,開腹手術と全身的薬物治療の2つだけであったが,近年,嚢腫の穿刺吸引,嚢腫内薬物注入療法が諸施設で検討され,治療法の選択が広がってきた。しかし,本疾患はまだ統一された根本治療がないのが現状であり,さらに,他の卵巣嚢腫や類内膜癌などの悪性卵巣腫瘍と鑑別が困難なこともあり,その取り扱いには十分な注意が必要である。本疾患の取り扱いは,年齢,妊孕性,挙児希望の有無,他の部位の内膜症の合併程度,嚢腫の大きさと性状,現在までの内膜症の治療とくに開腹手術の既往などによって異なる。本稿ではこれらの因子の状況に応じた取り扱い方について述べる。
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