Japanese
English
綜説 Clinical Review
卵巣嚢腫の臨床
Clinical studies on cystoma ovarii
大口 善市
1
Zenichi Oguchi
1
1名古屋大学医学部産科婦人科学教室
pp.557-565
発行日 1963年7月10日
Published Date 1963/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202849
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緒言
卵巣は人体器宮中嚢胞性腫瘤の好発部位であり,実際婦人科臨床上これら腫瘤はその頻度において重要な疾患であるにもかかおらずその多くが生物学的良性を示すことからごく一部の学者を除き一般臨床家の注意を引かず,別出物の組織検査による正診をまつこともなく棄却されたり甚だ不当な待遇を受けているのが現状である。臨床診断名としての"ovarian cyst"はその内に実際多くの病理学的に全く相異なつた性質の腫瘤を包括しており,真性腫瘍の他単なる貯溜嚢胞と老えられる一群,時には炎症性産物の一部をも含めての総称なのでありこれら相互の鑑別は手術前にはもちろん,剔出後においても一般臨床家には肉眼的に困難な場合が少なくないのである。
嚢胞性卵巣腫瘤の分類は細部にわたつては学者により一様でないが,大きく非腫瘍性嚢胞と真性腫瘍との二つに分ける考え方には異論がなく,Novakによれば第1表に示す如くである。(a)のnon—neoplastic tumorsに属するものはいずれも一種の貯溜嚢胞と考えて良いもので真性腫瘍としての性格を欠くものであり,(b) neoplastic tumorsは被覆上皮に腫瘍性性格を認めるものである。従って真性腫瘍としての狭義の卵巣嚢腫と称すべきものは(b)の群に限らるべきものと考えるので以下この群に就いて記述する。
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